『ひきこもりのそとこもり』ひきこもり猟師物語

ひきこもりが 生きる場所を探す物語を ここに残していく。

ヒキコの旅

4話 いまだ帰らぬ片足

その夜、ヒキコは口をアワアワと開閉させて固まっていた。 寝ぼけ眼をこすりながら便所から寝床に帰る途中の 視線の先、月明かりに照らされたそこには 〝買ったばかりの靴下〟の片側が独りでに床を這っていた。 「な、なんなんだ!夢か、明晰夢か?!」 この…

3話  「明確な意思で逃げろ」

ある朝、追跡伝書鳩がヒキコの足元に手紙を落とした。 「なんだろう」 拾い上げ、封を開けた。 「どこにいるのだ、賠償金は必ず支払ってもらうぞ」 ヒキコの気分は沈んだ。 過去に所属していたカンパニーからの手紙だった。 返事はしなかった。 お金はないし…

2話 「8つの小粒より2つの大粒」

ヒキコは吟遊詩人として生きてみることにした。 もうカンパニーには属さない、その決心は固かった。 一人の詩人として多くの人にポエムを聞いてもらい、 自分と似た人々、心の折れた人々の立ち直るきっかけになりたい そう思ったのだ。 しかしヒキコは文才が…

1話 自分探しの書

とある街の外れ、丘の上の古い家にはヒキコという男がいた、 ヒキコは旅人であった、というより旅人にならざるを得なかった 近くの村から逃げてきたヒキコは行き場もなく、食い扶持もないが 生きることは諦めていなかった。 お金もなく、行き場もないので 知…