『ひきこもりのそとこもり』ひきこもり猟師物語

ひきこもりが 生きる場所を探す物語を ここに残していく。

1話 自分探しの書

とある街の外れ、丘の上の古い家にはヒキコという男がいた、

ヒキコは旅人であった、というより旅人にならざるを得なかった

 

近くの村から逃げてきたヒキコは行き場もなく、食い扶持もないが

生きることは諦めていなかった。

 

お金もなく、行き場もないので

知り合いの〝キコリ男爵〟という

少し変わった男爵の元でその日暮らしをしている。

 

町外れにある古い家、暖炉があり、猫がいて、

夜は美味しいご飯とお酒が飲める。

 

ヒキコは毎晩のように悩み事を相談した。

 

 

キコリ男爵の家には多くの変わった旅人が訪れる、

それは人間不信に陥っていたヒキコにとっては良い環境だった。

 

時には剣士、時には遊び人、そして魔法使いさえもがヒキコの人生相談に乗ってくれた

 

 

ヒキコは以前カンパニーと呼ばれる稼ぎ場所を転々としていたのだが、

どのカンパニーでもうまく生きていくことができなかった。

 

「ほら!!働け!動け!!夜遅くまで起きてるから元気が出ないんじゃないか?」

ヒキコは体力がなかった、そして夜が好きで朝が苦手だった。

 

「なんども確認するんじゃない!自分で考えたらどうだ!!」

「なんでこんな勝手なことをするんだ!確認しろ!」

 

ヒキコは理解できなかった、聞けといったり、勝手にやれと言われたり

 

「男のくせに」

ヒキコは性別で決めつける世の中が嫌いだった

 

「言い訳するな!」

ヒキコは理由を話しているだけなのにと、内心「またそれか」と思った

 

「」

「」

「」

ヒキコはカンパニーという社会に疲れてしまった

 

 

 

ある夜、キコリ男爵はワインを揺らしながら言った 

「君は自分の弱点強さを知るべきだね、オススメの魔術本がある、試してみなさい」

 

さっそくヒキコは本を使い、まず自分の弱点を知ろうとした。

 

本を開き対価を払った。

 

すると宙に文字が浮かび出した。

 ブォン…

ヒキコの共感力偏差値は28。

1万人中140位の非共感的タイプといえる。共感力が低い人は、他人の感情に全く振り回されないという強みがあるが、他者の心理や感情を汲み取ることが苦手であるという短所がある。

 

「おおおお…見透かされてるような」

文字は次々浮かぶ

強靭性偏差値は29。

1万人中179位の繊細な人といえる。強靭性が低い人は、他人への配慮ができるという強みがあるが、対人関係でストレスを抱え込みすぎてしまうという短所がある。

 

 

スルー力偏差値は32。

1万人中360位くらいのスルースキルの低さといえる。スルー力が低い人は、物事をとても真面目に受け止めるという強みがあるが、受け止めてすぎてストレスを抱えてしまうという短所がある。

その後も文字は流れたが特に気になる弱点はこの3つだった。

 

共感力

強靭性

スルー力

 

キコリ男爵「とにかく打たれ弱いようだね、例えるならすごく面の広いガラス板…」

 「強さはあるのかね…? 」

 

 

ヒキコはさらに対価を払ってページをめくった。

直観力偏差値は78。

1万人中26位の直観的タイプといえる。直観力が高い人は、物事の本質を瞬時に理解できるという強みがあるが、考えや話がしばしば飛躍しがちという短所がある。

 

自己主張力偏差値は77。

1万人中35位の自己主張スキルの高さといえる。自己主張力が高い人は、自分の主張をきちんと相手に伝えられるという強みがあるが、主張が強くなりすぎるという短所がある。

 

新奇性偏差値は62。

1万人中1151位の新しい物好きといえる。新奇性が高い人は、新しい物事やチャレンジを好み失敗を恐れず行動できるという強みがあるが、リスクを考えずに無謀な考えをしてしまうという短所がある。

 

ヒキコはちらりと男爵を見た。

 

キコリ男爵「はあ…ぶっ飛んでおるのう。強みと弱みが矛盾しているというか、これは生きにくいだろう」

 

「つまり、かなり稀な打たれ弱さだというのに

稀な察し力、、目立ちたがりで発信したがり」

 

「うーーむ」

 

男爵は頭を掻きながら寝室へ消えていってしまった。

 

 

ヒキコはもともと自分を分析することを日課としていたので

この結果はすんなりと受け入れることができたし、

文字となったことで心が楽になった気がした。

 

自分はこういう人間だ!といくら本人が主張しても

多くの人は鼻で笑い、真に理解はしてくれなかった。

 

しかし、〝精度が高い〟とキコリ男爵も太鼓判を押すこの魔術書は

他人に有無も言わせない魔力を持っていたのだ。

 

 

ヒキコは自分の進む道を改めて考え直すことにした。

「やっと冒険が始まった気がする」

 

実はいつだってそう感じていたのだが、今度こそは!と希望を感じたソレに

ヒキコは確かなワクワク感を抱いたのだった。

 

「おやすみ世界よ、今日は久しぶりによく寝れそうだ」

ヒキコはいつも通り、朝の10時までグダグダと眠り続けた。

 

1話 ー自分探しの書ー 完